谷津田の光景

5月 田植えの済んだ谷津田  9月 収穫を迎えた谷津田

 「谷津」。東京都多摩地方や神奈川県では「谷戸」。どうして言葉が違うのか、富里に行く事前の勉強の中で私は疑問に思っていた。私は、自身の研究で神奈川県の谷戸地域に行くこともあるため、そこの違いを考えていた。

 実際に、谷津を三浦さんと池田さんの運転で案内していただいた。そこで、見えてきた谷津の光景は、田しか見当たらない、ある種の美しさのある光景だった。一般に多摩や神奈川の谷戸は、「戸」とあるように(本来、そういう意味ではないということはおいといて)住宅地であったり、都市的空間の一部であったりする。他方、富里の谷津はそうではない。津、まさに水をたたえる必要のある水田が広がる光景だった(本来の意味は港であるが)。

 少し、不思議な気分になった。それは家屋が本当に谷津の底には見当たらない、ということである。なるほど、集落は水が湧いてくる斜面の中部に存在するらしい。田の中に家々が点々としている風景ではなく、ただただ田が広がる谷津。その光景は、少し不思議な風景だった。

 

新しい光を観る

 この谷津の道路は日常的には、信号がないことから抜け道として使われているそうだ。カーブが多く、運転に集中する必要があり、日常的に運転されていてもなかなかその光景に気づかないかもしれない。

 近年、日本は観光立国を目指している。観光とは文字どおり、その土地の光を観ることである。そして、日常の何気ない光もまた、その土地の光である。外から訪問した私は、もっともっと富里の日常の持つ光を見てみたいと思った。それが、その土地を深く知る観光になるから。


雪の根木名谷津 撮影2014.1