室蘭でワイン作れないの?

室蘭の人に訊かれた。残念ながら、太平洋に突き出た室蘭の半島は夏は霧に覆われて、涼しい。葡萄には向かなそうだとおもいながら。「洞爺湖町の月浦には素晴らしいワイナリーがあるよと」いう。周辺の地形と気候、地質を思い浮かべる。巨大な火山地形の洞爺湖、有珠山、昭和新山を思い出せば、溶岩と火山灰だけに思える地域。

ネットの地図で、ブドウ栽培に向きそうな南東の斜面を探すと、洞爺湖の外輪山の南東側に沿うように長流川が流れている。東から西へ向かい、有珠山の裾を南転する。この川の右岸、南向き、東向きの斜面は火山灰で水はけもよく、果樹栽培に向くと思いながら、航空写真を眺める。

山地は森林、河岸段丘の緩やかな斜面には畑が広がっている。産業総合研究所の地質図navi.をみると、下久保内の一部の段丘面に、泥岩の層があり、1950年代の論文には炭化した植物の化石があると書かれている。浅い海だった可能性がある。「この頁岩は整然とした層理を示し,ハンマーで叩くと厚さ 1 〜 5cm の板状に割れ易い。炭質物に富み,植物化石の破片や厚さ 1 〜 1.5mm のきわめて薄い炭層を挾むことがある。」(pp.23,通商産業技官太田良平,1956,「5萬分の1地質図幅説明書」虻田,札幌-第 50号

 

海であれば、

海であれば、カルシウムやナトリウム、マグネシウムが含まれて、ワインの貴重な個性になるかもしれないと、車を走らせた。無知というのは恐ろしい幸せで、久保内に着くと、一面の林檎畑、花豆畑、一部葡萄畑が目に飛び込んできた。それだけで地図の見方を始めて教わった小学生のように感動できる。黄色くて甘い王林、ムツ、フジなどが直売されている。切って味見させてくれた。

「うちは50年くらいだけど、そっちは100年はやってんじゃねえか」と真っ黒に日焼けしたおじさんが隣の農園を指差す。

水はけ、日照、夏の気温、土は十分。雪のない場所で、冬越しの気温はどうか。先輩たちに訊いてみたら、葡萄の可能性もわかるかもしれない。ここで葡萄を作り、ワインを造る人々が現れるかもしれない。少なくとも、シードルやポワール、カルバドスのような蒸留酒はできる。それが、室蘭のリストランテで供される光景を思いながら畑を歩いて、林檎をいただいた。

2014.12.21 杉山幹夫

 

 

 

 

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