かつてこのあたりは千代田村と呼ばれるのどかな農村でした。ここに飯田(いいだ)という地名が生まれたのは、徳川家康(とくがわいえやす)が江戸にやってきてからのことです。 

天正(てんしょう)十八年(1590)、江戸に入府した家康は、千代田村とその周辺を視察します。このとき案内役を買って出たのが、村の住人飯田喜兵衛(きへえ)でした。「所(ところ)の巨細(こさい)とも申上(もうしあげ)(土地のことについて、細かく詳しく申し上げた」(『新撰東京名所図会(しんせんとうきょうめいしょずえ)』より)という喜兵衛の案内に感心した家康は、彼を名主(なぬし)に任命し、さらに地名まで「飯田町」とするように命じたのです。以来、江戸の町の開発が進み、この界隈(かいわい)に武家屋敷がひしめくようになっても、飯田町という名前は残りました。ただし江戸時代の武家地は町名をもたなかったため、飯田町は通称として使われていました。

 

 

千代田区町名由来ガイド・飯田町より