概要 戦後トラックの発達が急速に進み、全国の森林鉄道がトラック輸送に転換されていきます。ですが、高野山では、戦時中から軌道からの決別が進んでいました。トラック輸送発達が原因ではなく、戦争中のガソリン不足と鉄不足が原因です。木材確保のために乱伐され、路線も乱開削されました。そして、刈り尽くすと軌道の短縮や牛馬道への転換が行われます。「第7次説明書」が作成された昭和26年時点で、理由は別にして幹線の軌道が短縮され28kmが23kmになっていましたが、続けて短縮される計画が既にあったことが判ります。同書に林道事業計画が掲載されています。

  自動車道 高野幹線    1.600km チリナシ-下古沢

  自動車道 幹線延長    4.438km 幹線1.437km/御殿川牛馬道3.001km

高野林道軌道幹線を自動車道へ転換する計画です。軌道を維持するには木材の量が必要です。木材が少ないのに経費をかけて軌道を維持することは出来ません。早々に軌道幹線の御殿川沿いなどが軌道ではなくなり、続いて塵無や神谷まで軌道ではなくなったのです。神谷インクラインはこの流れの中で廃止され、インクライン上とインクライン下を結ぶために自動車道が付けられたのです。

唯一森林鉄道として延伸される予定が2.7kmでした。

  軌道二級 高野山3林班線 2.700km

 

昭和31年「第8次説明書」から引用します。

 

高野林道森林鉄道

一級 幹線                10.570km 明治37-昭和9  九度山-細川

一級 幹線                12.195km   昭和3-7     細川-40林班

二級 大門支線         1.226km   昭和4-5     花坂線-15林班

二級 10林班支線       2.574km   昭和22-23    幹線-10林班

二級 3林班支線         3.683km  昭和27      幹線-3林班

 

高野林道自動車道

高野林道                      8.344km  昭和30-31    細川―7林班

御殿川林道                  4.206km 昭和27-30    中の橋-28林班

26林班                          0.574km 昭和28      24・25・26林班界-25林班い小班

 

車道

森脇林道                     5.898km 昭和8-21     河根-2林班ろ小班

 

木馬道

御殿川林道支線           1.684km 昭和14-17     30林班―29林班

高野林道2林班線     0.795km 昭和17       森脇林道-2林班

 

牛馬道

御殿川林道                 0.163km 昭和14       25林班-28林班

御殿川林道

別所谷支線              2.927km 大正10       25林班-38林班

高野林道極楽橋線     1.003km 昭和5         幹線浦神谷-8・9林班

高野林道

チリナシ線              1.100km

 

第7次・第8次説明書から読み解きますと、昭和26年には、軌道から自動車道や牛馬道などに転換が始まっています。昭和31年の時点で、高野林道幹線8.344kmが細川から7林班まで自動車道に転換が終わり、御殿川林道4.206kmも自動車道になっています。森林鉄道の新設は、森林鉄道二級線として極楽橋線0.110kmと3林班線0.218kmのたった0.3km、改良も牛馬道から二級線にされた3林班線の1.541kmだけです。

 昭和29年から高野山有料道路の建設が始まりますが、昭和31年に書かれた第8次説明書には、「高野山観光道路の完成とにらみ合わせて」とか「有名な高野山、九度山間の森林鉄道も早晩姿を消すこととなろう」などの文言が見られます。

  

・昭和34年 4月8日 高野林道幹線(鶯谷~細川出合)の開通式が細川土場で行われる。

                           5月   高野山有料道路が細川まで一部線が開通する。

                                               全線トラック輸送に転換される

                           8月15日 明治43年生まれの高野索道が閉鎖される。

・昭和35年 高野山有料道路が大門まで7月に全線開通します㉕。

明治38年に誕生した高野山森林鉄道も昭和34年に54年(1905-1959)の生涯を閉じます。

 

引用文献

1       大日本山林会報告第286号(大日本山林会 明治39年9月発行) 高野の美林

2       大阪大林区署明治41年度統計書

3       大日本山林会報告第271号(大日本山林会 明治38年6月発行)高野山国有林の伐採

4       山林公報第十号(農商務省山林局 明治40年発行) 高野山林道ノ開通式 

5       大阪大林区署大正2年度統計書

6       改訂九度山町史史料編(九度山町教育委員会)明治41年2月12日旧軌道軌条取外シ 見積書など

7       高野山国有林(大阪営林局 昭和2年5月発行) 高野山国有林施業案説明書

8       伊都橋本木材史(伊都橋本木材組合 昭和61年発行)

9       大阪営林局昭和14年度統計要覧

10    林道事業のあゆみ(林道協会 昭和39年3月発行)

11    みやま(大阪営林局機関誌 昭和4・5年)

12    国有林森林施業小史  大阪営林局創立100周年記念(昭和61年6月発行)

13    高野町史 近現代年表

14     大日本山林会報告第325号 青森森林鉄道敷設竣工

15    日本森林学会HP

16    高野営林署の歩み 和歌山森林管理署高野事務所 平成13年

17    地理院地図 旧版地図

18    林業技術 2000年発行 伐木・集運材年表

19    明治林業史要 大正8年発行 

20    旧版地図大正11年

21    地理院地図

22    大阪営林局昭和3~7年度統計書

23    大阪営林局昭和24年度統計書

24    土木技術 1959年発行

25    道路建設 1960年発行

26    第3次検訂 高野事業区 修正施業案説明書 実行期間 昭和8-12年度

27    第6次編成 高野経営区 経営案説明書   実行期間 昭和24-33年度

28    第7次   高野経営区 経営案説明書   実行期間 昭和27-36年度

29    第8次編成 高野経営区 経営案説明書   実行期間 昭和32-41年度