帰りたくないと泣く女の子
「ねっこぼっこのいえ」という活動に出合う。「子育てサロン」だと紹介されていったけど、そこは子どものお陰で、人々が集まる幸せな空間だった。
2013年8月1日
玄関で、女の子が大泣きしている。お母さんが笑いながらしゃがんで待っている。僕の方を見て笑顔。訊いてみると、帰りたくないのだそうだ。
そんなに楽しかったの?
うん。
そっかあ。帰りたくないよねえ。でも、お姉ちゃんが学校から帰ってくるから、お家に帰ろうね。
満面の笑顔の小林真弓さんが迎えてくれた。彼女はボランティア団体ねっこぼっこのいえの代表だ。ねっこぼっこには三つのひろばがある。
*「赤ちゃんひろば」毎週月曜日10時~15時、0〜2歳の赤ちゃんと保護者の方限定
*「みんなのひろば」毎週水曜日10時~15時、毎週金曜日12時~17時赤ちゃんからお年寄りまで、誰でも参加可能
*「学びのひろば」三つのグループで活動中。絵本を楽しむ会「ちいさなたね」、児童文学を学ぶ会「子どもの本を学ぶ会」、障がい理解の会「くるみの会」
他にドメスティックバイオレンスの勉強会等も開いている。
僕がお邪魔したのは金曜日。
「大」 みんなのひろばの日だった。学校法人月寒キリスト教学園黎明幼稚園の放課後の施設を利用して、乳幼児とお母さん、ボランティアと称して地域の年配者や若い 研究者が集まって手伝っている。黎明は「しののめ」と読む。金曜日は少ないときでもで40人。多いときは80人。放課後になると、小学生、中学生がやって くる。
第二次大戦直後に出来た月寒教会(つきさっぷきょうかい)の横にしののめ幼稚園がある。園の向かいは緑地で月寒資料館だ。しののめは東雲とも書かれる。夜明けを待つ一瞬をさす言葉。園児達に夜明けの光のように周囲を照らす存在になって欲しいと願う幼稚園の建学精神だ。
園長先生が優しく話してくれる。「人の尊さを共に生きる」ことを園児に伝えたい。そのため園児同士のもめごとが大切な教育の糧だという。教諭達がじっくり 観察して、園児同士でお互いの意見を尊重して問題を解決するのを待つ。放課後は、勤務が終わるまで園児ひとりひとりの様子を報告し合い、体調、心、成長の 様子を共有する時間をたっぷり取っている。遊びを中心とした保育、異年齢のクラス、少人数による保育、自然との関わりを大切にした保育を柱にしている。
僕は螺旋階段を上り詰めた狭い玄関の外で僕は靴の紐を解いていた。
立ったまま片足を上げていると後ろから青年が登ってきた。僕は急いで、靴を脱ぎ、狭いところを「帰りたくない女の子」を跨いで中に入る。この家は、かつて 牧師さんがお住まいになっていた牧師館だった。幼稚園とは教会を挟んで反対側。教会の玄関の横に螺旋階段があって、二階にあがると入り口。丁寧に使い込ん だ決して広くない2DKを引き継いでいる。よく磨かれた台所でおやつを作っている。