富里市久能地区。ここには千葉県内で唯一、センダイタイゲキ(仙台大戟)という野草が自生しています。

しかし、この野草、本来は関東以北に分布するものであり、何故、富里に自生しているのかは長い間の「謎」だったのです。富里にはこの他にも福寿草の群落があることなどから、氷河期からの生き残り、はたまた渡り鳥によって種子が運ばれて来たなどの説が唱えられていたのですが、近年、新たな可能性が浮上したのです。

 

センダイタイゲキ(仙台大戟)

トウダイグサ科の多年草植物で、湿った土地を好み、乾燥するとなくなる。細長い地下茎は水平に伸ばし、草丈30cm前後の直立茎に狭い長楕円形の葉を互生し、散形枝を頂生する。

花期は5月。茎葉は長さ約6cm。花序の腺体は半月形を呈する。

センダイタイゲキの花

近年では、地球温暖化の影響や、自生地の環境悪化により数が減っていることから国のレッドデータ(日本のレッドデータ検索システム)で準絶滅危惧種とされている。環境変化に弱いこの種が富里市でひっそりと自生していたことを発見したのは、当市において教員をされ、植物採集を行っていた折目庸雄氏の業績に他ならない。残念なことに氏は既に他界され、氏の研究成果である『富里の植物』だけが残されている。

さて、その折目氏が生前に語っていたセンダイタイゲキが富里に自生する理由が「渡り鳥による種子の移動説」であった。しかし、この説については疑問視をする人も多く、あまり支持される説ではなかった。次に富里には本来寒冷地を好む野草が自生していることから「氷河期からの生き残り説」であったのだが、他の野生種に比較してセンダイタイゲキの自生地が極めて限定的であることから、その説に関しても疑問が残されている。ただし、千葉県のレッドデータを確認してみると、過去、松戸市にはセンダイタイゲキの自生地があった(現在は自生地自体が開発で消滅)と報告されていることから、千葉県北部一帯にセンダイタイゲキが自生していた可能性は捨て去れないものと考えられる。

そして近年、新たな可能性として浮上したのが「人による種子の移動説」である。

現在、センダイタイゲキが自生する場所は、末廣農場の範囲外周部から僅か200m余りの位置であり、農場時代にも牧草地として使用されていた部分に当たる。これまでの調査で、末廣農場と小岩井農場は頻繁に物の往来が行われていたことが分かってきており、センダイタイゲキ分布の中心部である岩手県から「人」や「荷物(飼料)」に紛れて、種子が運ばれてきた可能性が考えられるようになったのである。

科学的根拠のない話であるが、末廣農場に関連する小岩井農場からセンダイタイゲキの種子が運ばれ、現在でもその子孫が花を咲かせている。そう考えるとこの花がより愛おしく感じられるのである。 

富里市HP 富里市指定文化財 センダイタイゲキ及びカタクリ自生地