Hack For Japan 及川さん、冨樫さん対談(3/4)

 

Hack For Japan 及川さん、冨樫さん対談(3/4)

脳みそに汗をかく

 

- 今回、大震災後、携帯電話がつながらなくて多くの人が安否確認さえできず、グーグルやヤフーの安否、避難所情報のサービスなどが有効に機能しましたが、そもそも災害時にも携帯電話がつながるようにできないのでしょうか。

    

及川:バッテリーさえ保てば、必要最小限の限定的な通信は技術的にできると思います。1990年後半から、メッシュネットワークの研究が行われています。インターネットのパケットモデルの近距離無線版です。各端末が局所的な範囲で接続可能なIPを取得し、基地局がダウンしても狭い範囲内でならつながる仕組みです。また、その中の1台がアドホックに基地局になって、そこからインターネットにつなげることもできます。音声や大量のデータのやりとりは無理でも、メールなら送受信可能です。技術はすでにあるので、今から実用化を進めれば、次の災害への備えにはなるのではないでしょうか。

 

冨樫:普段から使っていないと、いざという時、使えないですよね。

 

及川:ええ、ですので、普段から使えるアプリケーションとして用意すればいいと思います。例えば、ライブコンサート会場でみんなで携帯電話を使い始めると、トラフィックが大量になりつながらなくなってしまいます。もしコンサート会場内で友人とはぐれたら連絡できない。そんな時に使えばいいと思います。大晦日や初詣も同じです。利用シーンを考えると、非常時の技術は普段でも使えますね。逆に、普段から使っていないと、いざという時使えません。

 

冨樫:メッシュネットワークの件は、さっそく関係者に電話して動きはじめましょう(笑)。

 

- 今のお二人の会話のように、様々なアイデアを考え、それを実現していくことが重要だと思うのですが、最近は海外のアイデアを日本に「輸入」することが多いように感じます。日本の技術者はアイデアを出すのが苦手なんでしょうか。

 

及川:日本の技術者は、アイデアを出すフレームワークを学ぶ機会が少ないかもしれませんね。しかし、その道に長けた人というのは日本にも多くいます。実際、宮城県で行われたHack For Miyagiの2回目には、アイデアを出す達人に参加してもらいました。

 

冨樫:Hack For Japanが目指す方向のひとつに、IT技術で何かを作るだけでなく、アイデアから考えるというのがあります。仕事において、技術者と企画者が対立することはよくありますが、日ごろから交流して互いのことを理解していれば、異なる意見をぶつけ合ってよりよいアイデアが生み出せます。Hack For Miyagiでは、この考え方を早くから取り入れてきましたが、Hack For Japanでも企画やアイデアに詳しい人材など技術者以外の参加を増やし、アイデアソンをもっと充実させていきたいと思っています。

 

及川:IT業界では、今までは技術者同士の個人的なつながりが主でした。アイデアソンは技術者以外でもいいので、ネタがある人は集まってくださいという取り組みです。これによりつながる規模が拡大しました。例えば、今回の地震で活断層の状況が変わってしまいましたが、2011年7月に開催したアイデアソン、ハッカソンで紹介された「崖イイネ!」プロジェクトは、各地の人が地表に出ていて気になる断層の写真をとってアップし、全国の地震学者がそれを見て活断層地図を描き変えていくという取り組みです。これは個人的なつながりでは実現できなかったと思います。

 

及川:Hack For Japanのアイデアソンは、参加して、会って互いに話すだけでも得るものが多くあります。技術面だけでなくプレゼン方法など、いろんな発見もあるはずです。Hack For Japanが、自分たちが今、見えているコミュニティにとどまらず、技術者以外も自然に集まるコミュニティになっていくといいと思います。そのためには、アイデアソンやハッカソンを、もっと勝手に地域でもやって欲しい。IT系以外の企業の人も、どんどん参加して、今、何が起きているのかをぜひ知って欲しい。しかめっ面ではなく、楽しいイベントを開催して「脳みそに汗をかく」体験をすることが重要ですね。また、Hack For Japanには、高校生も参加しています。「赤べこガイガーカウンター」は高専の子たちが作りました。若い人もどんどん参加して欲しいですね。

 

「赤べこガイガーカウンター」とは ・・・・・

 

赤べこガイガーカウンター

 

2011年7月30日に福島県会津若松市で開催されたハッカソンで、赤べこガイガーカウンターチームが作成した作品。

(写真出典:Hack For Japan ウェブサイト)

 

(取材日:2011年12月20日 ネットアクション事務局 村上文洋)

 

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