かつて、鷲別川は大きな川であった。
鷲別川は、鷲別岳とカムイヌプリとを源流に持つ大きな川でした。鷲別岳からはサッテクワシペツ、カムイヌプリからはワシペツライパ(現:富岸川)が流れており、(現)鷲別駅の東側付近で合流していました。深さは大人の腰の高さ以上もあり、川にはサケが遡上し、キュウリ魚やウグイも上がり、ウナギ漁も行われていました。モズクガニ、カジカ、ヤツメウナギなどがいて豊かな川でした。
アイヌ語によると、「鷲別」の語源は、チゥ・アㇱ・ぺッ(浪・立つ・川)がチワㇱペッになり更にワㇱペッになった(山田秀三「アイヌ語地名の研究 3」)とか、ハシュ・ペッ(柴川・増毛版ハシュベツの類)(永田方正・北海道蝦夷語地名解 P113 https://dl.ndl.go.jp/pid/992037/1/113)などいくつかあるが、投稿者は浪立つ大きな川であった説が好きです。
1892年(明治25年)の室蘭本線の鉄道工事の後に富岸川が海につなげられて鷲別川の水量が減り、上流で工業用水としても汲みだされて水量の少ない鷲別川になりました。
2017年に鷲別川の様子を、古い地図や航空写真からFacebookに拾っていましたので、ここにも残しておきます。
1.アイヌ語地名で記載された鷲別川
これは幌別地区のアイヌ語地名を記録した図書に示された鷲別川で、はっきりとアイヌ語の川の名前、サッテクワシペツやワシペツライパが記載されています。
トンケシ川が鉄道敷設後の新川であることも記載されています。
(2017年には国立国会図書館でコピーしてきましたが、2023年にはデジタル閲覧可能になっていました)
出典:知里真志保, 山田秀三 共著 噴火湾社, 1979.5 <GC7-154>
CC BY: 国立国会図書館内/図書館 https://ndlonline.ndl.go.jp/#!/detail/R300000003-I9570087-00
室蘭・登別のアイヌ語地名 其の1
2.Stanford大学のライブラリ地図の鷲別川
Stanford大学のライブラリからダウンロードした20万分の1の帝國地図で幌別中心に輪西から虎杖浜までを抜き取った図です。
左上には「大正2年製版昭和12年修正」とあり、1913年(大正2年)でも鷲別川と富岸川がつながっていたことを追うことができます。
CC BY: (出典) Stanford大学のライブラリ https://purl.stanford.edu/wr082xb3869
3.伊能忠敬の残した鷲別川
伊能忠敬の残した地図では、鷲別川は残念ながら簡単に書かれています。また、鷲別川の東側には、支流のトフシナイ川が独立した川としても書かれています。
この図では、伊能忠敬の足跡を追うことができ、鷲別岬の先端やボンズ山付近にも行った軌跡が残されています。
1の「アイヌ語地名で記載された鷲別川」でもわかるようにトプシナイ川はボンズ山の東側を流れる鷲別川の支流ですので、ワシベツとトフシナイ川間はワシペツライパ(川)の山側の道を進んだのかもしれません。
CC BY: (出典)「国土地理院所蔵伊能大図(米国)彩色図 番号29(室蘭)より部分掲載」
https://kochizu.gsi.go.jp/items/322?from=category,14,index-table
4.航空写真で見る鷲別川
昭和10年から昭和30年の鷲別川の様子です。昭和28年頃には鷲別川の直線化工事が行われたのがわかりました。
A .1935年(昭和10年)ころの鷲別川の様子(黒澤友義さん作成)
鷲別川の蛇行と、(現)鷲別駅の東側で2つの川が合流している様子も示されている。
鷲別川でとれる魚についても記載されています。
参照: https://ja.localwiki.org/nb/鷲別岬 (荒川氏掲載)
黒澤友義さんからいただいた昭和10年の鷲別の再現マップ
B .1944年(昭和19年)の航空写真
上のA.で示された鷲別川の蛇行がほぼそのまま残っている事がわかる。
航空写真出典:http://mapps.gsi.go.jp/maplibSearch.do#1
CC BY: (出典) 国土地理院 航空写真より 19441022(昭19)91Q32-C8-122 (60度回転後トリミング)
C .1953年(昭28)の航空写真
鷲別川を直線化工事中であることがわかる。
線路の南側から国道36号線の橋までの間、川の右側には建物がほとんど無い。
富岸側から鷲別川への水路もまだ確認できます。
航空写真出典:http://mapps.gsi.go.jp/maplibSearch.do#1
CC BY: (出典) 国土地理院 航空写真より 19530818(昭28)USA-M228-79 (90度回転後トリミング)
D .1955年(昭30)の航空写真
鷲別川を直線化工事が終わったことがわかる。
線路から下流の鷲別川はほぼまっすぐに整えられている。数個の三日月沼が確認できます。
富岸側から鷲別川への水路もまだ確認できます。
航空写真出典:http://mapps.gsi.go.jp/maplibSearch.do#1
CC BY: (出典) 国土地理院 航空写真より 19550420(昭30)USA-M491-2-48(トリミング)
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